日本テレビ放送網株式会社 導入事例 | 1.0MB | ダウンロード |
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テレビ放送のデジタル化をきっかけに導入された放送設備の光ネットワークは、大容量となったデジタル放送信号の超高速伝送に最適だが、その反面、従来のメタル配線とはまったく異なる光インフラ特有のメンテナンスが必要なことは、まだあまり知られていない。
業界でも早い時期から光ネットワークを導入した日本テレビ放送網株式会社(日テレ)は、導入から数年後、光インフラの障害に見舞われたが、その対策にNTT-ATの光コネクタ端面検査装置(通称:光コネクタ端面モニタ)を重宝しているという。NTT-ATの光コネクタ技術担当が、日本テレビ本社のある汐留・日テレタワーで話を伺った。
制作技術統括部
チーフ・テクニカル・ディレクター
吉田 亘 氏
制作技術統括部
(CTD補佐)
三橋 崇弘 氏
制作技術統括部
(CTD補佐)
廉 相圭 氏
日頃から弊社製品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。本日は製品が現場でどのようにご活用いただいているかと、製品へのご質問を伺おうとお邪魔しました。まずは皆さんの業務内容について教えていただけますか?
吉田氏:私たちは技術統括局制作技術センターの制作技術統括部という部署で、スタジオや中継の映像設備の保守管理を担当しています。
具体的には、汐留、麹町、生田にある各スタジオ、および中継車をはじめとする映像に関わる機材(スイッチャー、カメラ、伝送装置など)の導入、および計画立案、維持管理など放送機器全般の運用管理を統括しています。
光ファイバの採用はいつ頃でしょうか?
吉田氏:光ファイバの本格的な導入は1995年で、HDのデジタル化が規格される以前のD1規格(SDのデジタル規格)の放送機器が導入された時期です。
当時としては先駆的な、フルデジタルのD1規格の大型中継車を導入しましたが、その車載されているカメラで光ファイバを初めて採用しました。
業界内でもかなり早い段階からデジタル化を採り入れたのは、どういう経緯があったのでしょうか?
吉田氏:1995年当時、16対9の画角の映像をいち早くお伝えしたいという意向があり、東京ドームの巨人戦、Jリーグなどのスポーツ中継を行う大型中継車の設備でデジタル化を行いました。
また、ほぼ同じ頃に映像のデジタル処理を用いたバーチャル技術と呼ばれる画像合成の技術が普及し始めましたが、弊社でも1996年に当時世界的にも珍しい生放送に特化したCG専用スタジオを設備しました。
視聴者のニーズを先取りした新しい映像技術を、どんどん採り入れていこうという流れが会社全体にありましたね。
クリーナーで清掃しているのにトラブル続出?
光ファイバコネクタにトラブルが出るようになったのは、いつ頃からでしょうか?
吉田氏:それまで光ファイバのメンテナンスにはあまり気にかけず、専用クリーナーで拭く程度でした。しかし導入から3~4年ほど経った2000年頃から、中継機材を中心に光ケーブルの清掃を要するトラブルが目立ち始めました。
その中でも、2003年ごろから東京ドームに設備している弊社のカメラの光端子盤で清掃しても改善しないトラブルが出始めました。その時は原因が分からず、結局その日の放送に使えなかったのですが、後日設備業者、メーカー殿と数時間掛けて測定を行ったところ、端子盤の光コネクタに原因があることが分かりました。
その時の具体的なトラブルの症状とは?
吉田氏:カメラにまったく映像が映らなかったり、最悪の時はカメラの電源さえ入らないケースもあったのです。
もしかすると埃が多い環境での発生が多かったですか?
吉田氏:そうですね。特に東京ドームは空気圧で天井ドームを膨らませているため、粉塵が常に舞っています。
そこは温度や湿度変化が大きい環境でしょうか?
吉田氏:ええ。例えば夏のドーム頭頂部付近では40度近くにもなりますし、場所を問わず湿度もかなり高くなります。
まだあまり知られていないことですが、光コネクタの接続面に小さな異物が入り込むと、温度や湿度の変化で異物が膨張して隙間が発生し、伝送に障害が出る場合があるんです。
吉田氏:えっ!? それは知りませんでした。では普段まったく抜き差ししていない光コネクタでも、ある日突然に繋がらなくなることがあるのですか?
そういったことも十分にありえますね。
吉田氏:そうだったんですか! やっと謎が解けました。これは東京ドームではなく、この汐留社屋での現象ですが、半年前にスタジオでセッティングしたまま、まったく抜き差しをしていない光コネクタにトラブルが出たのです。この汐留社屋は湿度が高いので、それも原因だったんですね。
通信業者でも、トラブルの原因が光コネクタ端面の汚れだったことに気付かないケースがありました。
三橋氏:ケーブル自体を交換すると直ったので、原因が光ケーブルのどこかにあるということは分かったんです。清掃で一時的に元に戻っても、しばらくするとまた繋がらなくなるので、光ケーブル自体の故障と思って諦めていました。
光コネクタ端面チェックでトラブルが激減!
弊社の光コネクタ端面モニタは、いつごろからお使いいただいていますか?
吉田氏:以前から御社の光コネクタ端面クリーナーを使っていたので、時おりホームページを見ていたのですが、ある時キャンペーン中だった光コネクタ端面モニタの存在を知り、これならトラブルの原因が分かるかもしれないと考えてすぐに導入しました。確か2009年のことです。
三橋氏:さっそく使ってみたところ、ビックリするくらい光コネクタ端面の汚れが鮮明に見えたので、本当に驚きましたね。それ以来、メンテナンス時には端面モニタでのチェックを必須としたので、トラブルを激減することができて本当に良かったです。映像品質の信頼性確保は、私たち機材保守担当の使命といえますから。
吉田氏:この汐留社屋の前にあるオープンスタジオから、平日の午前に放送している情報番組「PON!」を生放送しているのですが、オープンスタジオで使用している4台のカメラは毎日、社屋内のサブコン(副調整室)内の端子盤で光ケーブルを繋ぎ変えて使用しています。端面モニタを使う以前はそこでのトラブルが多かったのですが、やはり抜き差しの時に何らかのゴミが入っていたからでしょうか?
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左:清掃前 右:清掃後
廉氏:私は麹町で「Music Lovers」や「ハッピーMusic」という歌番組の収録に使うスタジオの機材保守をしているのですが、スモークの演出効果に油分を含んだ煙を使うため、機材にその油分がかなり付着するのが困っています。
コネクタ接続部にも油汚れが入り込んでしまうため、光コネクタ端面の清掃には特に気を使いますね。
それは、光コネクタにとって、かなり過酷な環境ですね。
廉氏:ええ、ですからもうこの端面モニタがないと怖くて保守ができません。あまりにも汚れが鮮明に見えるので、使われているすべての光コネクタをチェックせずには、いられなくなりました(笑)
吉田氏:端面モニタを導入してからは、コネクタの汚れを確実にチェック、清掃できるようになったので、トラブルがほぼ皆無になったと同時に、その保守費も削減できたのは大きいですね。
廉氏:現場スタッフが「清掃したのに使えない」と光ケーブルを持って来るのですが、端面モニタでチェックすると汚れが予想通り残っているんです。今では現場スタッフとの保守連絡会議の場で、端面モニタを使って光コネクタの状態を見せながら、清掃方法の講習も行っています。
光コネクタ清掃のノウハウを社内共有しているのですね。
吉田氏:最近では、設備や機材の効率的な稼動を求められ、機材の予備も最小限で対応していますが、光ファイバケーブル、およびそれに関わるカメラなどに関しては、端面モニタのお陰で安心して現場に機材を提供できるようになり、予防保全の観点からも本当に助かっています。
以前はいろいろな光ファイバの検査ツールも試しましたが、これほど簡単で効果のあるツールは今までありませんでした。私たちにとって光コネクタ端面モニタは、なくてはならない必須ツールになっています。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。光ファイバの保守や清掃についてご質問がありましたら、またお気軽にお問合せください。
*記載された会社名及び製品名等は、各社の商標または登録商標です。
*記載内容および所属・役職は、2011年3月時点のものです。