KTN結晶とは
『KTN結晶』とは、カリウム(K)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)から成る酸化物結晶です。KTN結晶の「電圧を加えると屈折率を自在に変えられる」という性質を利用すれば、入射したレーザ光の進む方向を自由に制御することができます。
KTN結晶(30x30x50 mm)
KTN光スキャナーの動作イメージ
概要
KTN結晶は1950年代に初めて報告されて以来、巨大な電気光学効果を持つことで知られていましたが、現在まで産業応用が進んでいませんでした。その要因は、大型かつ高品質な結晶を成長することが極めて難しかったためです。2007年にNTTフォトニクス研究所(当時)により、光学デバイスとして使用できるレベルの結晶育成技術が確立されました。さらに、KTN結晶の物性研究を進め、世界で初めて新しい原理により、結晶の屈折率を制御する「空間電荷制御電気光学効果」を見出し、可動部の無い高速かつ小型の光スキャナーを実現しました。特徴
動作速度100 kHzの高速スキャナー
機械的な可動部品が無く、外部電界によってレーザの出射方向を制御するため、従来品(ガルバノミラー、ポリゴンミラー等)の100倍以上の高速動作が可能になりました。例えば医療分野において、光干渉断層計(OCT)用光源に応用すれば、従来よりも高速に診断が可能となり患者へ負担軽減が期待されます。
小型化を実現
KTN結晶に電極を形成したシンプルな構造であり、チップサイズは数mm角と極めて小さいため、スキャナーモジュールは2×2×5 cmの小さな筐体(従来製品の1/100)に収めることが出来ます。
広い波長範囲で動作が可能
KTN結晶は、488~3500 nmの波長範囲で透明なため、広い波長範囲でのデバイスが実現可能です。標準仕様として、可視光、1.0、1.3、1.5 μm帯のスキャナーを販売しています。特殊波長についてもご相談ください。
製品ラインナップ
1次元KTN光スキャナー(ファイバ入力タイプ、空間入力タイプ、マウントタイプ)
ファイバ入力タイプ
マウントタイプ
仕様
波長 | 可視 | 1.0 μm帯 | 1.3 μm帯 | 1.5 μm帯 |
---|---|---|---|---|
偏向角 | 150 mrad | 120 mrad | ||
駆動周波数 | 10 ~ 100 kHz | |||
入射アパーチャ | 1.0 mm × 1.0 mm (空間入力タイプ) | |||
出射ビーム径 | ~ 0.4 mm (入射ビーム径 0.5 mmの場合) | |||
寸法 |
モジュール 23×23×50 mm マウント 25×25×38 mm |
2次元KTN光スキャナー(ファイバ入力タイプ、空間入力タイプ)
仕様
波長 | 可視 | 1.0μm帯 | 1.3μm帯 | 1.5μm帯 |
---|---|---|---|---|
偏向角 | 120 × 96 mrad | |||
駆動周波数 | 10 ~ 100 kHz | |||
入射アパーチャ | φ1.0 mm (空間入力タイプ) | |||
出射ビーム径 | ~0.4 mm (入射ビーム径0.5 mmの場合) | |||
寸法 | 40×40×100 mm |
2次元KTN光スキャナー(ハンドヘルドタイプ)
仕様
波長 | 可視 | 1.0μm帯 | 1.3μm帯 | 1.5μm帯 |
---|---|---|---|---|
偏向角 | 120×120 mrad | |||
駆動周波数 | 0.1~20 kHz | |||
出射ビーム径 | ~ 0.8 mm (入射ビーム径 0.5 mmの場合) | |||
寸法 | 16×16×114 mm | |||
重量 | 60g |
リニアアンプ(DC~3 kHz 1チャンネル・2チャンネルタイプ、20 kHzタイプ)
リニアアンプ(DC~3 kHz 1チャンネルタイプ)
20kHzタイプ
仕様
型番 | KST1000A | KST1000B | KAS0201CH |
---|---|---|---|
周波数 | DC ~ 3 kHz (*1) | 20 kHz(10 k~30 kHz (*3)) | |
出力電圧 | ±600 V(*2) | 283 Vrms | |
DCバイアス出力 | - | 0 ~ 500 V | |
信号入力電圧 | ±10 | - | |
出力電圧波形 | - | サイン波 | |
出力チャネル数 | 1 | 2 | 1 |
ペルチェコントローラチャネル数 | 1 | 2 | - |
入力電圧 | AC 100~230 V / 48~62 Hz | ||
インターフェイス | - | RS-232C(*4) | |
寸法 *突起部は除く | 320×430×177 mm | 260×350×150 mm |
*2 : 出力電圧は変更可能です。詳しくはお問い合わせください。
*3 : 別途外部入力信号が必要です。
*4 : 別途制御用PCが必要です。(サンプルプログラムについてはお問い合わせください。)
共振電源(100 kHzタイプ、200 kHzタイプ)
KPS1001CH
KPS2001CH/KDT2001CH
仕様
型番 | KPS1001CH | KPS2001CH | KDT2001CH |
---|---|---|---|
周波数 | 100±5 kHz | 200 kHz±100 ppm | |
出力電圧(*1) | ±400 V | ±450 V | |
DCバイアス出力 | ±500 V | ±600 V | |
信号入力電圧 | - | - | - |
出力電圧波形 | サイン波 | ||
出力チャネル数 | 1 | 1 | 1 |
ペルチェコントローラチャネル数 | - | - | 1 |
入力電圧 | AC 100~230 V / 48~62 Hz | ||
インターフェイス | RS-232C(*2) | ||
寸法 *突起部は除く | 150×150×75 mm | 246×350×148 mm |
*2 : 別途制御用PCが必要です。(サンプルプログラムについてはお問い合わせください。)
KTN光スキャン例
KTN光スキャナー偏向角と印加電圧の関係
1次元KTN光スキャナーを用いて、100 kHzで波長633 nmのレーザ光をスキャンした実験例です。KTN結晶にDC電圧150 V印加した時の、AC電圧と偏向角の関係を示したグラフになります。2次元光スキャナーのスキャン例
ラスタースキャン例
リサージュスキャン例
KTN2次元スキャナーの動画
KTN光スキャナーの動画(英文)にてご紹介しております。再生時間:03分04秒
応用例
- 光干渉断層計(OCT)
- 内視鏡
- 精密測量システム
- レーザ顕微鏡
- レーザ加工
- レーザマーカー
- 光スイッチ
関連情報
ニュースリリース等
『CLEO/Laser Forcus World Innovation Award』大賞受賞
「CLEO(レーザや光技術の世界最大級の国際会議)/Laser Forcus World Innovation Award」は、レーザー科学分野における革新的な製品や技術を表彰するもので、日本企業としては初の大賞受賞となります。
2017年1月24日 KTN結晶による波長可変技術を応用した厚み計測装置向けの高安定光源を開発(浜松ホトニクス、NTT、NTT-ATとの共同開発成果)
2017年2月15日 新たな位置計測システム(光掃引方式位置計測技術)を開発(アイレック技建とNTT-ATが開発)
2017年4月14日 世界初、硬性内視鏡で生体組織の3次元イメージングに成功(NEDO、大阪大学、NTT-ATとの共同開発成果)
資料ダウンロード
高速KTN光スキャナー | ダウンロード | |
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KTNスキャナー駆動用電源 ・リニアアンプタイプ電源 KST1000A、KST1000B ・サイン波共振タイプ電源 KSP1001CH、KSP2001CH |
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