気象レーダーのレドームの事例
雨によってドーム表面に水膜が発生
小雨でもレドームの表面に水膜が形成されると、信号が低下してしまいます。水膜の厚さは、降雨強度、レドームの材質、表面状態などによって変化します。
図1は、均一で滑らかな撥水加工をしていない直径5mのレドーム表面に形成される水膜厚の推定値を示しています。例えば、1時間あたり30mmの降雨の場合、表面に0.2mmの厚さの水膜が形成される可能性があります。
図1 降雨と水膜の厚さの関係*2
水膜対策をしないと、水膜減衰*3により動作範囲が極端に狭くなる
実際、豪雨期にレドーム上の水膜による信号の減少が顕著になり、観測範囲が極端に狭くなるということがありました。
例えば、1時間あたり30mmの降雨は、レドーム表面に0.2mmの厚さの水膜を形成し、5.0dBの減衰をもたらす可能性があります。
図2に示すように、観測範囲を平常時の80kmから10kmに狭まりました。
図2 水膜による電波減衰の実例
水膜対策のポイント
BSアンテナの事例
降雨時におけるアンテナの電波減衰
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図3 雨と電波の関係
➁ アンテナに降った雨にで生じる水膜による減衰
↓
HIRECは水膜による電波減衰を大幅に低減!
降雨時の電波の減衰は、衛星とBSアンテナ間の降雨、つまり空間中の雨滴で生じる減衰だけではありません。
水膜減衰というものがあります。
水膜減衰とは、BSアンテナに雨が付着してできた水膜による電波減衰のことです。
この水膜減衰は防ぐことが可能です。
超撥水材料HIRECをBSアンテナの表面に塗装すると、表面に水膜がほとんどできませんので水膜減衰を大幅に低減することが可能となります。

東京で衛星の仰角が45°の場合 「電子情報通信学会誌(Vol.79, 1996-1)」より引用
図4は降雨強度と降雨減衰量の関係を示しています。
利用周波数が10GHz以上になると降雨減衰が生じ、周波数が高くなるほど減衰量は大きくなります。また、降雨が多くなるほど減衰量は増加しています。
例えば、BSの周波数帯である12GHz周波数帯において、降雨強度が5mm/h,10mm/hで、降雨減衰量はそれぞれ約1dB、約2dBとなっています。

上図は水膜の厚さをパラメータとして周波数と水膜減衰量の関係を示します。(気象研究ノート112号における水膜減衰の式および水の複素誘電率データを元に算出)
周波数が数GHz程度でも水膜減衰が生じることがわかり、周波数が高くなるほど、また、水膜が厚くなるほど減衰量は大きくなります。
なお、ある降雨強度における水膜の厚さは、アンテナのサイズや形状などで異なりますが、気象研究ノート139号に掲載されている例を紹介します。
10℃で直径5mのレドーム形状において、降雨強度が10mm/hrで、水膜厚さは約0.16mmとなっております。この例から、0.1-0.2mm厚の水膜は、通常の降雨でも生じうるものと思われます。
また、アンテナ表面の紫外線による劣化を考慮すると、同じアンテナでも屋外設置期間が長くなるほど、同じ降雨量でも水膜はより厚くなるものと思われます。

図4の降雨減衰データと図5の水膜減衰計算結果をまとめて図6に示します。
これより、水膜減衰の影響が小さくないことがわかります。特に、10GHz前後およびそれ以下では水膜対策が重要となります。
アンテナ表面に撥水加工して水を強力に弾くと、10GHz以下では水膜起因の電波減衰はほとんど生じなくなります。
10GHz以上では降雨減衰は生じますが、水膜減衰分をなくすことができるため全体での減衰の軽減が期待できます。
アンテナへの雨対策事例

図7はBSアンテナ(12GHz帯)での電波受信特性の実測例です。
超撥水材料HIRECの有無で比較したところ、降雨時(17時~19時)にHIRECを塗装していないアンテナでは約3-4dBの減衰が発生しているのに対して、HIRECを塗装したアンテナでは減衰が生じていません。
降雨強度は不明ですが、 HIRECを塗装したアンテナにおいて減衰が生じていませんので、降雨強度と降雨減衰量のグラフから5mm/h以下と推定されます。
また、降雨強度と降雨減衰量のグラフにおいて5mm/hの降雨強度時の12GHz帯での降雨減衰は約1dBですので、図7の3-4dBの減衰は、降雨減衰ではなく、水膜減衰と解釈できます。
さらには、雨があがったのちの19時以降でも減衰が生じていることは、アンテナ表面にまだ水膜が存在していることによる水膜減衰であることを裏付けています。
すなわち、アンテナに雨が降った場合は、雨があがったのちもしばらくは水膜減衰が生じることを示しています。一方、超撥水材料HIRECを塗装したアンテナでは減衰が生じていませんので、アンテナ表面に水膜がほとんど生じていないことを示しています。
以上により、超撥水材料HIRECは、水膜減衰の有力な対策の1つといえます。
最後に、水膜減衰は10GHz以下の周波数でも生じるとの話がありますが、現在、未確認ですので、状況がわかり次第、最新情報を追加していきます。
アンテナへの撥水シートによる雪対策事例
撥水シートでの対策は、冬季でも装着が可能です。
従来、アンテナ等に直接施工して雪対策を行うことがほとんどで、冬季には気温が下がり現場施工ができないのが課題でした。
そこで、冬季でも現場設備への雪対策が可能となる撥水シートの事例を紹介します。
撥水シートのメリット
- 冬場でも設置可能 ← アンテナへの5℃以下での現場塗装は不可
- 1-2時間で設置可能 ← アンテナの現場施工では、最低2日間必要
撥水シートのデメリット
- 寿命が1年程度(シート材料の耐候性に依存) ← 従来の現場塗装の場合、約3年
※撥水シートの材質:ポリエチレン(PE)」あるいはポリエステル
※撥水カバーは特注で作製します。ご相談ください。
撥水シートの構造と実際
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反射鏡:撥水シート
ポリエチレンあるいはポリエステルのシート(青色部)に超撥水材料【HIREC下塗り(薄緑色部)とHIREC100(赤色部)】を塗布。
- 右写真は撥水シートをアンテナの反射鏡部へ装着した様子。
- HIREC100は機能材料であり、塗料ではないため、刷毛でぬると刷毛目(凹凸)が生じます。白い凹凸は、良好な撥水性の証拠です。(コンバータ拡大図)
降雪時における撥水有無による電波受信状況の比較
降雪時に実施した比較実験をご紹介します。
■ 撥水未加工アンテナ | → | 水膜発生 | → | 受信不良 |
■ HIRECによる撥水加工アンテナ | → | 水膜の発生を抑制 | → | 正常受信 |
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降雪時におけるBSアンテナの電波受信状況(BSアンテナ設置から約14ヶ月後の状況)
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(2009年1月1日19時~2009年1月3日12時 場所 新潟湯沢)
撥水未加工アンテナでは、受信断(チューナ受信レベル20以下)が数回生じましたが、
撥水カバーを装着したアンテナ(コンバータにも撥水施工)ではレベルの低下は生じるが、正常に受信できました。
降雪時におけるBSアンテナの電波受信状況(アンテナ設置から約26ヶ月後)
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撥水未加工BSアンテナ
撥水未加工BSアンテナでは 録画期間54日間 のうち、1日当たり数10分から9時間近くに渡って受信不能(受信レベルが20以下)、あるいは、映像の乱れが観測された。
その頻度は15回。
撥水加工BSアンテナ
撥水加工BSアンテナでは受信レベルが25以下の頻度はなかった。
電波受信状況の詳細事例
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正常にBS放送を受信できたのは、撥水加工したアンテナやコンバータ部には水膜がほとんど生じなかったためであると推定できます。
アンテナの着雪対策として融雪装置がありますが、電波減衰の主要因が雪や氷ではなく、水(水膜)であることから、アンテナ融雪装置は電波減衰には効果が見込めないおそれがあります。
通信・放送関連
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- アンテナ
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- 鉄塔
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電力・エネルギー関連
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気象・天文関連
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- その他
建設関連
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芸術作品
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"CountingSheep" The Times Square Show 2011 | 400KB | ダウンロード |
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